ネガティブ思考は、厄介だ。
自分を傷つけ、落ち込ませ、未来を不安でいっぱいにする。
そして、私たちをやりたいこと、やるべきことに踏み出せなくさせる。
「ネガティブ思考を止めることができたら、もっと自由に楽しく生きることができるのに。」
誰もがそう思いながらも、結局は性格の問題だとして片づけ、治すことを諦めてしまう。
しかし、ネガティブ思考は決して性格の問題でも治せない問題でもない。
自分の意志でコントロール可能。ただし、ネガティブ思考とは何かをよく理解しておく必要がある。
それでは、ネガティブ思考とは何か。
そして、ネガティブ思考の終わらせ方について、解説しよう。
ネガティブ思考の功罪
ネガティブ思考は、私たちの積極的な行動を制限し、進むべき道を邪魔する。
しかし、失うものばかりではない。
ネガティブ思考の特徴
ネガティブ思考の特徴は、否定形で考えることにある。
例えば、
- ○○が足りない
- ○○ができていない
- ○○ができない
- ○○をできそうにない
- 失敗するかもしれない。
- ○○を失うに違いない
などのように、欠点やデメリットに注目したり、未来の失敗や損害を予想する。
つまり、ネガティブ思考とは、ネガティブ「志向」なのである。
しかし、ネガティブ思考は、それだけで害になるわけではない。
問題なのは、ネガティブ思考によって引き起こされるネガティブな感情である。
ネガティブ思考の罪
ネガティブ思考はネガティブな感情を生む。
ネガティブな感情はその人を不安と恐怖でいっぱいにし、行動を起こさせないようにする。
しかし、事態はそう単純ではない。
以下、ネガティブ思考がその人の行動力を奪う様子を見てみよう。
ネガティブ思考とネガティブな感情の関係
ネガティブ思考はネガティブな感情を生むが、この2つはお互いに高めあう性質がある。
① ネガティブ思考→ネガティブな感情
ネガティブ思考は、不満、不安、辛さ、情けなさ、悲しさ、みじめさなどのネガティブな感情を引き出す。
② ネガティブな感情→ネガティブ思考
ネガティブな感情は、その人の意識をさらに欠点やデメリットに集中させ、ネガティブ思考を加速させる。
③ ①に戻る
加速したネガティブ思考は、さらにネガティブな感情を強化する。
以下、繰り返し。
頭の中がネガティブ思考とネガティブな感情でいっぱいになると、ついに正常な思考力を失う。
- ○○ができない、持っていない自分はダメ人間だ。
- ○○をしてもらえない自分は価値がない。魅力がない。
- あれもこれも全部、自分の努力不足のせい。
- あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ。しかも完璧に。
- 今まで全部ダメだったから、これからもダメに違いない。
- 誰も信用できない。社会も信用できない。
これらは、明らかに考えすぎなのだが、本人は大マジである。
その結果、すっかり臆病になってしまい、行動を避けたり先送りしたりする。
- 仕事で認められるチャンスを逃す
- 恋愛に発展させるチャンスを逃す
- いろいろ面倒になって引きこもる
- 転職などの人生を変えるチャレンジを見送る
こうしてとても大事な「本当は得られたはずのもの」を失う。
過ぎた時間は戻ってこないが、そこに含まれていた希望もまた戻ってこない。
ネガティブ思考の功
ネガティブ思考は失うものばかりの厄介者に見えるが、実は私たちの日常生活を支える必要不可欠な要素である。
もし、ネガティブ思考が無かったら、今ごろ誰一人としてまともな生活を送れていなかったはずだ。
なぜなら、ネガティブ思考は常に私たちに冷静さを与え、バカな暴走を止めるリミッターとしての役割があるからだ。
私たちは時々冷静さを失う。欲に目がくらんだり、自暴自棄になったりする。
この時、ネガティブ思考は、その先にある不幸な事態を想起させ、のぼせた頭をクールダウンさせる。
そして、これ以上無駄に傷つくことや損害を大きくすることを防いでくれるのである。
あなたの健康や経済状況を維持できているのは、このネガティブ思考のおかげなのである。
ネガティブ思考を手放せない理由
ネガティブ思考は、我々から切り離すことはできない。
なぜなら、ネガティブ思考こそ生きる基本であり、社会の基本だからである。
ネガティブ思考は宿命
動物は、天敵などの脅威が迫っていないか常に緊張状態である。
そして、危険を察知すると、反射的に逃げる、隠れるなどの身を守る行動をとる。
この命を守る行動は、動物の最も基礎となるもので、生きる上での最優先事項。
長い進化を経てもなお動物たちが命をつなぐことができたのは、命を守ることを最優先にしてきたからである。
これは、もちろん人間にも当てはまる。
人間も、常に自分の身を守るために脅威を見つけ出そうと必死だ。
これがネガティブ思考の正体である。
「○○が足りない」「失敗するかもしれない」などと不安要素を見つけ、それに恐怖を感じるのは、その中から最大の脅威は何かを見つけ出そうとしているのである。
それは、人間に進化するずっと前、魚だったころから変わらない。
このように、ネガティブ思考はDNAレベルで組み込まれているもので、今さら都合よく切り離すことはできない。
つまり、ネガティブ思考は、命を預かったものの宿命ともいえる。
社会的要因
ネガティブ思考は、社会的要因によっても刷り込まれる。
子供は、社会のルールを知らずに生まれてくる。
その後、親や先生から教育を受けるわけだが、その指導方針は欠点やミスへの注目と否定型命令である。
「○○ができていない」「(○○が足りてないから)がんばろう」
「○○をしてはダメ」「○○するな」
指摘を受けた子供は、以後、同じ間違いを繰り返さないよう、自分の欠点や不足している点などのネガティブな部分に注目するようになる。
この習慣は大人になっても続く。
例えば、自分のスキルを伸ばすためには、苦手分野に着目し、克服しようと考える。
あるいは、失敗を繰り返さないためには、失敗の原因を探り、再発防止に努める。
また、社会の様々なルールも、ネガティブリスト方式で語られることが多い。
(※ネガティブリストとは、禁止事項を並べたもの。公園の入り口にある看板がその代表例。)
このように、社会全体がネガティブ志向になっている。
そこに生きる私たちがネガティブ人間になってしまうのも、無理もない話なのである。
ネガティブ思考の終わらせ方
とは言え、ネガティブ思考が私たちの未来を制約しているのも事実。
そこで、ネガティブ思考を終わらせ、ポジティブ思考に切り替える方法を伝授しよう。
ネガティブ思考をポジティブ思考に切り替える方法
ネガティブ思考を終わらせるためには、視点を切り替えればいい。
そこで、ネガティブな部分に注目するのではなく、ポジティブな部分に注目しよう。
それだけで、自動的にポジティブ思考に切り替わる。
それでは、ポジティブな部分に注目するコツを紹介しよう。
私たちは、何かをしようとするとき、反射的にネガティブな部分に注目してしまう。
この時、すかさず自分に逆の質問をしよう。
例えば、
- ○○が足りない。 →じゃあ、足りているものは?
- ○○ができていない。 →じゃあ、できているところは?
- ○○ができない →じゃあ、できることは?
- ○○ができそうにない →じゃあ、できそうなことは?
- 失敗するかもしれない →じゃあ、成功するかもしれないことは?
- ○○を失うかもしれない→じゃあ、失わずにすむものは?
このように頭に浮かんだネガティブな部分の反対の質問をすること。
そして、ポジティブな部分に気づくことが重要である。
ポジティブな部分に気づくことができたら、自動的にポジティブ思考に切り替わっていく。
ポジティブな思考とポジティブな感情が共鳴、増幅しあうからだ。
それはまさにネガティブ思考とネガティブな感情がそうであったように。
大切なのは、せっかく見つけた希望や可能性から絶対に目を離さないこと。
これこそ、ポジティブな人に特徴的な「楽観的思考」と「積極的行動」の本質なのである。
まとめ
私たちは基本的にネガティブ人間である。
ネガティブな部分に注目し、ネガティブに考え、ネガティブな感情を持つ。
おかげで、毎日は不安と緊張ばかり。失うものも多かったはずだ。
一方、ネガティブ思考のおかげで失わずに済むこともある。
反射的に感じるリスクが行動を抑制し、失敗や損害を未然に防ぐからだ。
しかし、リスクを恐れるあまり現状維持に固執し続けることは、変化や多様性、創造性を排除することになり、状況や時代の変化に対応する柔軟性を失う。
それは、かつて存在した多くの文化、伝統、企業が消えていった道と同じである。
ネガティブ思考に支配され、行動しなければ、失敗はしないし傷つくこともない。
しかし、成長もしないのである。