コミュニケーション能力が低いことにメリットはない。
百害あって一利なし。
言いたいのに言えない、聞きたいのに聞けないことは。本人にとって辛く、苦しい。
しかし、事態は想像以上に複雑で深刻である。
例えば、知らない間に周囲に迷惑をかけていたり、自分の未来の可能性を閉ざしたりする。
最悪なのは、それに気づかないまま、何もせずにこの悪しき事態を受け入れていることである。
それでは、コミュニケーション能力が低いことによるデメリットと、コミュニケーション能力を高める方法について解説しよう。
コミュニケーション能力が低いことによるデメリット【職場編】
コミュニケーション能力が低いことによる影響が最も大きい環境と言えば、「職場」である。
職場には様々な人間が集まり、全員で同じ目標達成のため活発にコミュニケーションが行われる。
このため、コミュニケーション能力の低いことによる影響は様々な形で現れる。
信用を失う
例えば、同僚が仕事で行き詰っている時に、本来あなたができるはずの適切なアドバイスをせずに見過ごしていると、その同僚は「見捨てられた」とか「裏切られた」という気持ちを抱く。
また、会議中、自分の担当に関する言及があった時に、何らかの発言をしないと周囲から「聞いていたのか?」とか「把握できていないのか?」という疑問を持たれかねない。
このように、一声かけるだけ、一声上げるだけで済んでいたはずの信用を失うことになる。
もちろん、「言いたかったけど言えなかった」などという本人にしかわからない葛藤など、周囲の人は知る由もない。
評価を下げる
職場では、頻繁に報告・連絡・相談が行われる。
しかし、これらに消極的な人に対する評価は高くない。
会議で発言がないと、意見がない、考えていないとみなされかねない。
また、指示を待つだけの姿勢も消極的に見えるため、これもまた評価を下げる。
その他、仕事の成果に対する評価を低く見積もられた時に抗議しないと、評価は低いまま。
もちろん地位も給与もそのままである。
このように、黙っていることはそれだけで評価を失うことになる。
仕事が増える
ひとこと聞けば済むことを聞かないと、自分で調べるところから始まるため、仕事が増える。
これは効率的に仕事を進めなければならない職場において、逆を行く非効率な仕事のやり方。
また、「担当外の仕事」や「優先順位の低い仕事」を断らないと、どんどん仕事が増えていく。
さらに、これが続くと面倒な仕事を押し付けられたり、最悪はいじめられることになりかねない。
このように、言うに言えない、聞くに聞けないという気持ちに押し切られてしまうと、増える仕事が労働時間を圧迫する。
成長できない
部下や後輩に指示ができないと、統率力を疑われる。
むしろ、指示のない環境でのびのび積極的に働く部下や後輩の株が上がり、地位を脅かされかねない。
また、自分の今の仕事や地位がふさわしくないと感じていても、これを変える意志を伝えることができなければ、あなたはいつまでたってもやりたい仕事や転職にチャレンジできない。
このように、堂々とできないことにより、自分にふさわしい地位を確立できない。
コミュニケーション能力が低いことのデメリット【日常編】
職場ではコミュニケーションに強制力が働くが、日常生活にそれがない。
つまり、コミュニケーション能力が低い人は、職場以外ではコミュニケーションを避ける傾向がある。
それが不満だらけの現状の原因であり、また未来に対する大きな足かせとなってしまうのである。
恋愛できない
恋愛は、コミュニケーションから始まる。
魅力を感じた人に声をかける、連絡先を聞く、誘うなどのアプローチができなければ、心理的な距離は縮まることはない。
永遠に「名前は知っている人」か「友達」のままである。
また、誰かが声をかけてきてくれた時に無下にあしらってばかりでは、これも発展性がない。
聞くことは会話の基本。それができなければ、お互いの信頼関係は結べない。
これは恋愛に限らず友情でも同じこと。
このように、コミュニケーション能力が低いと、恋愛はなかなか難しい。
別れられない
仮に相手に押し切られる形で恋愛関係になることができたとしても、今度は別れることができない。
相手に不満があって別れたいと思っても、それを伝えることができなければ、関係は続いてしまう。
しかも、相手に不満があるときに限って、相手は今の関係に満足している。
別れを言い出せないあなたの心中を悟って、相手が自分から別れを切り出すことはない。
このように、状況を打開する一言を言い出せないばかりに、無駄な時間を浪費することになる。
ストレスがたまる
日常に起きる様々な「トラブル」や「理不尽な対応」に黙っていてばかりでは、ストレスがたまる。
例えば、買った商品が壊れていたら交換を願い出るべきだし、店員からの説明がわかりにくければ契約はするべきではない。
それを放置して「ま、いっか」と自分を納得させようとしても不平や不満は消化されるわけではない。
こうしてたまったストレスは、やがてネガティブ思考を生み、活動エネルギーを奪う。
その結果、人生に悲観したり、何かを諦めたりする「見えない」きっかけになる。
成長の機会を逃す
興味のあること、関心のあることにチャレンジするためにはコミュニケーションが必要なものもある。
例えば、何かを習いたいときはそれを教えてくれるところに行かなければならないし、
海外留学したいなら、留学しに行くところからコミュニケーションが必要になる。
こうした「やる気」を、コミュニケーションが低いという理由でつぶしてしまうことは、自分の成長を妨げる。
声をかけ、飛び込んでみれば大きな感動と可能性が広がっているのに、それをつかむことができない。
そんな「もったいないこと」を繰り返さないために、あなたは苦手なコミュニケーション能力を高めなければならない。
そして、それは驚くほど簡単にできてしまうのである。
コミュニケーション能力を高める方法
コミュニケーションに苦手意識を持つ人でも、友達とは活発にコミュニケーションできている。
コミュニケーション能力を高めるコツは、この「友達と話す感覚」を職場や日常生活に当てはめればいいだけである。
認識を変えよう
コミュニケーションが苦手な人は、相手との間に上下関係を作っている。
だから、コミュニケーションを取る前に「言ってはいけない」、「言ったら怒られる」、「聞いてはいけない」、「聞いたら怒られる」という不安に襲われ、黙ってしまう。
そこで、「関係」を見直してみよう。
本来、相手が誰であろうと、立場や状況がどうであろうと、「対等な関係」であるべきである。
友達や家族と気兼ねなくコミュニケーションが取れるのは、この「対等な関係」が作れているからだ。
上司や同僚、その他の人々はあなたの王様ではないし、あなたは奴隷ではない。
あなたは職場においては仕事の能力を認められた仲間であり、日常においては同じ価値と権利を持つ国民である。
だから、言うべきは言っていいし、聞くべきは聞いていい。
たとえどんな状況でも。どんなタイミングであっても。
なぜなら、自分も相手も価値は平等な仲間だからである。
むしろ、拒絶する方がおかしいのである。
黙っていいわけがない
人間は、不安や恐怖を感じるとそれを避けるように行動する。
言いたいことを言えない、聞きたいことを聞けないのは、その先に感じる不安から逃げようとするからである。
そこで、声をかけることを迷った時は、声をかけない先に起こりうる最悪の事態を想像しよう。
例えば、声をかけなかったために、その人との友情が終わってしまうかもしれない。
あるいは、声をかけなかったために、将来大活躍するはずの未来の可能性が閉ざしてしまうかもしれない。
はたしてそんな未来を黙って見過ごしてしまっていいのだろうか。
それは未来の自分を見殺しにしているようなものだ。
コミュニケーションは拒否し続ける限り、多くのモノを失う。
それを変えることができるのは、自分しかいないのだ。
あなたに言いたいことがあるとき、聞きたいことがあるとき、黙ってはいけない。
みんなの期待を裏切らないために、未来の自分を救うために、絶対に黙ってはならない。
たとえ、黙れと言われたとしても。
まとめ
近年、コミュニケーション能力が低いことに悩む人が増えているという。
これに呼応するように、新卒・中途採用で重視される項目として「コミュニケーション能力」を挙げる企業が多い。
しかし、そもそもコミュニケーション能力が低い人などいるのだろうか。
たしかに、発声器官や聴覚の障害に苦しむ人はいるが、近年になって増えているわけではない。
問題の本質は、対人認識にある。
本当は相手が誰であれ平等な関係であるべきなのに、これを強固な上下関係にしてしまう人がいる。
ここを正常にしてあげれば、コミュニケーションはスムーズになる。まるで、友達と話すように。
社会活動においてコミュニケーションは大切だ。
なぜなら、人間が社会を構成しているからである。
コミュニケーションが苦手な人は、コミュニケーションの本質である対人認識を見直してみよう。
そうすれば、きっと驚くほど世界は気楽で、可能性に満ちたものであることを知ることができる。
これからその自由な世界でどう生きるかは、あなた次第なのである。